タオルの表面をよく見ると、ループになった糸がピョコピョコと沢山出ているのが分かります。私たちはこれをパイルと呼んでいますが、このような生地を作るためには、実は特殊な技術が必要とされるのです。
その技術の基になるのが、テリーモーションの原理と言われるものです。この原理は、1811年頃に、フランスで考案されたと言われています。
今回は、そのテリーモーションの原理について、ご説明いたします。

 

■一般的な布生地とタオル生地の違いについて

テリーモーションのお話の前に、まず、一般的な布生地(平織り)とタオル生地の違いについて、ご説明しておきます。見た目はもちろん、その構造にも違いがあるのです。
その違いとは、経糸と緯糸の種類。一般的な平織りの布は、タテとヨコ、それぞれの糸を直角に交差するように、交互に織り込んでいったものです。ガーゼハンカチなどの表面をよく見ると、それがよく分かります。
パイル生地の場合も、経糸と緯糸は同じようにあります。しかし、そこにもう一つ、パイルのループを作るための「パイル経糸」というものがあるのです。この糸は、パイルを作るためだけに織り込まれている糸です。にこのパイル経糸を、規則正しい間隔で、均一な大きさのループができるように織り上げるために、テリーモーションの原理が使われているのです。

 

■テリーモーションの原理について

肝心なテリーモーションの原理についてですが、とても分かりやすい言葉で説明すると、「一つだけ弛(たる)ませておいた糸を、他の糸と合わせてギュッと寄せることでループを作る」というものです。
通常の織物は1本1本の緯糸を筬(おさ)で強く打ち込みますが、テリーモーションは2本の緯糸を少し間隔を空けて打ち込み、3本目の緯糸の投入と同時に3本まとめて筬で打込みます。
この時、通常の織物は、経糸を強く張った状態で織り上げていくのですが、テリーモーションの場合は、地経糸(元々ある、パイル経糸ではない方の糸)を強く張り、パイル経糸を緩めに張ることで、筬打ちの際に、3本目の緯糸がパイル経糸と絡み、筬のストローク分(少し間隔を開けた分)だけ引っ張られたパイル緯糸が、結果的にループを作ってくれるのです。

文字だけでは、どうしても想像するのが難しいので、以下に、ご自分の指でシミュレーションする方法をご紹介しておきます。

 

【パイルができる原理のイメージを知る簡易方】

織機でタオルが織り上げられるのを真横からみたイメージをもって、

1.左手の薬指を緯糸①、中指を緯糸②、人差指を緯糸③に見立て、この3本の指でパイルに見立てたヒモをグリップします。

2.次に右手人差指を緯糸①、中指を緯糸②、薬指を緯糸③に見立て。この3本の指でパイルに見立てたヒモをグリップします。

この時、ヒモを →↑①↓②↑③→→→①↓②↑③→ のパターンでグリップして、

3.左手の①②③に右手の①②③を寄せていくと、左手の③と右手の①の間(上)にループが出ます。
→↑①↓②↑③この部分の上にループができる①↓②↑③→ これが、表パイル

これとは逆に、→①↑②↓③→→→①↑②↓③→ のパターンでヒモをグリップして、

4.左手の①②③に右手の①②③を寄せていくと、左手の③と右手の①の間(下)にループが出ます。

→①↑②↓③この部分の下にループができる①↑②↓③→ これが裏パイル

実際のタオル織機では、地経糸と緯糸で地組織が作られ、同時にパイル経糸と緯糸でパイルが形成されます。

テリーモーションの原理をマスターしたい方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。